支援の経験を本にするときは、結論だけでなく、何を見てどう考えたかが読み手の学びになります。ここでは支援方法の効果を解説するのではなく、実践を文章にするときの整理のしかたを紹介します。
見えたことと考えたことを分ける
「活動を嫌がった」と書く前に、実際に見聞きしたことを確かめます。例えば「誘いかけの後、椅子から離れた」は観察、「音が気になったのかもしれない」は解釈です。後者を断定しないことで、別の見方を読者が考える余地も残ります。
場面の条件を書き添える
時間、場所、活動、周囲の人数、どのような声かけをしたかなど、理解に必要な条件を選びます。情報を多く載せればよいわけではありません。個人が特定される情報を避けながら、考え方の理解に必要な背景を残す編集が必要です。
試したことと、その後をつなげる
「うまくいった」で終わらず、何を変え、どんな変化が見られ、まだわからない点が何かを整理します。一つの経験をすべての人に通用する方法として広げず、経験の範囲を明示します。読者が自分の状況と違いを比べられることが、実践の共有につながります。
掲載判断を制作工程に入れる
個人の記録を、そのまま原稿として渡すことは避けましょう。掲載する情報や同意の確認について、所属先の方針や関係者との調整を先に行います。架空の例や複数場面を再構成した例なら、そのことを明記し、実際の事例と区別して伝えます。
本人の言葉と、支援者の解釈を分ける
実践の文章では「本人はうれしかったはず」と書く前に、本人が実際に話した言葉と、書き手が受け取った印象を分けてみます。本人の気持ちを代わりに決めないことは、本づくりでも大切にしたい姿勢です。公表する範囲も、関係する人の意思を確かめながら考えましょう。
今日、ここから始めてみる
- 観察したことと解釈を色分けする
- 他の状況でも通用すると言い切っていないか読む
- 掲載範囲の確認を原稿作成より先に行う